疎開10:途中から唄えなくなる唱歌 トップページに戻る
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 うさぎ追いしかの山 コブナつりしかの川 (現 神戸市灘区 Tさんの手
記より)  落合は冬になると、よく雪が降っていたように思います。雪の朝、
私たちが登校した時は、正面の坂道は早く登校した人に踏み固められてツルツ
ルと滑り、こわくて横の溝に這入り四つん這いになって這い上がり、やっとの
思いで校庭にたどり着いた事もありました。教室には大きく四角な火鉢に大き
な赤々とした炭火が私たちを迎えてくれました。その火鉢を皆がぐるりと囲み
勉強しました。廊下もピカピカに磨かれていたことも印象に残っています。
  しもやけで病院通いをしていた時、治療で帰りが遅くなり、私だけの夕食と
なったのです。先に夕食を終わったばかりの友達が、私の夕食のおかずの煮豆
を見て、私の前後左右を取り囲み、「いいな、一粒でいいからちょうだい。」
と言って四方から手が出てせがまれたのです。(中略)
  『ふるさと』・・・ この唱歌のメロディーを聞く度にすぐ連想するのは落
合なのです。私は涙もろくないほうだと思うのですが、このメロディーを聞く
と、鼻の奥がツーンとなり途中から唄えなくなるのです。短い間でしたが色々
の想い出がいっぱい詰まっている落合なのです。
  お祭りに招待して下さった時も、なんとおっしゃるお宅だったか、どんなご
馳走だったか忘れましたが、沢山たくさん戴き、ちょっと前にかがむと、喉か
ら出そうになるまでご馳走になりました。
  そんなある日、婦人会の方々からおにぎりとタクワンの差し入れがあり、ど
んなにうれしかった事か。お察しいただけることと思います。

                              (95/03/19)