疎開5:私、いい子でいますよー トップページに戻る
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小学校3年生の手紙(現 神戸市垂水区 Oさんの手記より抜粋)
  お父さま、お母さま、ごきげんよくいらっしゃいますか。お伺ひ申します。
朝晩めっきり寒くなりました。今朝はきりが深く立ちこめて足のさきが痛いほ
ど冷いです。けれども心の中は、いつも暖かです。神戸にいらっしゃるお父さ
ま、お母さまの御恩を思い、レイテ島の兵隊さんのごくらうを思ってガンバッ
てゐます。朝は冷たい水で顔を洗ひ、うがひをし、ふきさうじをします。ちぎ
れるやうな水の中へ手をつっこんだ時に、自分の心がためされ、えらくなって
いくのだと先生がおっしゃいました。(中略)
  今たんぼは稻刈りがすんで、麥まきがはじまってゐます。朝お日様がでぬ暗
いうちから夜はあたりの人も見えぬやうなおそくまで、だまって一生けんめい
働いて下さるお百姓さんのありがたさがわかりました。私たちは、ごはんの時
は一粒もそまつにしないでありがたくおいのりをしていただいてゐます。
  だんだんさむくなっていくと思ひます。雪もふるでせう。ちぎれるやうなつ
めたい日もあるでせう。でも、私たちは、強い強い日本の子供です。天皇陛下
のみたみです。りっぱなお父さまやお母さまの子供です。先生のおっしゃるこ
とをよくきいて、學徒としての本分をつくします。(後略)−−−−−
  このよくまとまった手紙は子供たちの公式文書である。子供たちは手紙を書
きたい思いを心いっぱいに持っており、「上手に書くと、お父さんやお母さん
がとても喜ばれるのですよ。」という先生の言葉と相俟って「いい子でいます
よー」という叫びを字の中にこめて一生懸命に書いたものである。(後略)

                              (95/03/07)
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