(ブナ林) 岡山県の北西・新庄村にある毛無山(ケナシヤマ 岡山・鳥取県境
1218m)は県下最大のブナ林です。 標高8〜900m辺りから上は大きなブナ
だけで低中木はなく、下は熊笹に覆われた明るい林です。爺4人で山行を計画
していましたが一人が風邪でよろけ、3人で訪ねました。「草木を大切にしま
しょう。採取禁止」と掲示してあります。
(命の音) ブナが水を吸い上げる音を聞こうと聴診器を準備。ところが都
合悪い事に、まだ芽吹き始めたばかりです。下の方の枝に少し葉が開いている
ブナに聴診器を当てました。枯れ木の音と比べたりしながら、
A「こりゃぁ確かに吸い上げる音じゃ!」
B「ここに当てると、何か違う音がザーーとしょうるで・・・」
C「枯れ木もおんなじ音が聞こえるで・・・よう判からんなぁ・・・」
こんな次第です。も少し葉が開いた頃に又・・・ということで、命の音は聞
けたような、聞けなかったような・・・
(フタバ) 植物に詳しい蒜山の爺が、足元のフタバ(子葉)を指して、
「これがブナの芽ですよ。去年の秋に拾った実を蒔いて置いたらたくさん芽が
出ましたよ。」
大豆の発芽と全く同じで、肉厚のフタバを持ち上げています。まだ茶色三角の
実の皮を被った出始めの芽や、本葉が開いた芽やら・・・まぁいっぱいです。
去年の豊作が発芽ブナの絨毯を作っています。
(浦島太郎) ちょっと休憩で腰をおろし発芽ブナを眺めます。
「10cm角に2、30本は生えとるなぁ」
「この全部が大きく育ったらどうなるじゃろうか?・・・」
バカげた話に花が咲きます。
「二、三百年くらい経つと、ここの木のように成るんじゃなぁ。」
「あと三百年生きて、育ち具合を見たいもんじゃ。」
「浦島太郎になってしまうで・・・知った者はおらんようになって。」
(間引き) びっしり生えた芽の大部分は、あと僅かの命でしょう。
「ちょっと、間引いてやろうかなぁ・・・」
「黙って抜かんと、自然保護団体から抗議を受けるで・・・」
引き抜くと10cm程の直根がスッと軽く抜けます。枯れ葉も数枚付いたまま
で抜けます。発芽した小さな根が落葉を貫いて地面に潜り込む強い命の力を感
じます。たくさん間引いたブナの芽を袋に詰めて持ち帰りました。ナイショナイショ
(腐葉マット) ちぎれずに簡単に引き抜けるのは腐葉土のせいでしょう。
ブナの葉が何百年も積み重なり、土に還っています。大変な腐葉土の厚みで、
これが保水力を高めているのでしょう。
毛無山は全山が柔らかい道です。マットのようにふわっと弾み、気分良く山
が歩けて疲れませんなぁ。ありがたいことです。
(ナイショ話) 持ち帰った若芽を腐葉土ばかりの鉢に寄せ植えしておいた
ら、なんとか元気に育っています。でも高温地では無理なんでしょう。なるべ
く涼しい日陰に置いておきます。その残りの若芽は少し茶色の根の先の部分を
除いて、てんぷらにしました。ちょっとグシグシしますが、歯ざわりのいい絶
品?でした。
(若返り) 縦走路はカタクリの群生です。少し時期が過ぎていますが、た
くさん咲き乱れていて写真に撮りながら、のんびりと
ブナの水の音、ブナの発芽、艶やかなカタクリ・・・などと、今日もまた若
い命を吸い取って若返りました。
(データ) ’96.5.16(木) 快晴 (春霞) 爺3人
下山口1車回送 7:50 登山口 8:10 お堂 10:20 山頂(昼)11:00〜12:30
縦走 1120mピーク 白馬山 14:00 1060m 1017mピーク 俣野越 14:50
土用ダム 15:20 下山口 14:20 登山口 16:30
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