(櫃ケ山 954m ヒツガセン 岡山県湯原町) 中国山地には「山」を「セン」と
呼ぶ山がありますが、この山は岡山県内では数少ない「セン」の名の山です。
星山の尾根先ピークが旭川の流れに削りとられて出来たこの山は、旭川沿いの
国道313から仰ぎ見ると異国風で人目を惹きます。北側から見た山は整った
姿で「社(ヤシロ) 富士」と呼ばれています。私には関わり深い山なんです。
(久しぶり) ここ1週間ぐらいは朝からチョビリチョビリと酒を喰らって、
だらしない日々を送っていました。「こねぇな事じゃぁ体が鈍ってしまう」と
外に出てみると、穏やかな快晴です。「よっしゃ。久しぶりに櫃ケ山に!」と
例に依って急に思い立ち、ザザッと昼飯をかき込んで軽トラで出発。
(雪に足跡) 登山口にはRV車が1台。登山口辺りは道辺の畑に雪が5cm
ばかりでしたが、登るに連れて登山道にも雪が10cm、15cmと増えてきます。
新雪に先ほどのRV車の足跡。登りの足跡だけで3〜5人らしい。気にかけて
足跡を探っていると、どうやら4人らしく、女の人も居るようです。
少人数の足跡なら分かりますが、大勢の足跡になると個人の足跡は全く分か
らなくなってしまいます。そうか、あれは柳田国男の言葉だったかなぁと思い
ながら、前を登って行った足跡を避けて歩いてみます。すると、はっきり自分
の足跡が残ります。いま私は歴史に名を残している人物だぞー。おおぜいの民
衆の輩ではないぞえ。(いやいや、名もない民衆のほうが好きですな)
(雪山闊歩) 山頂付近はかなりの積雪です。年末の根雪にサラサラの新雪
が3、40cm積もり1m近い積雪です。ゴム長にロングスパッツを上乗せして
スキーストック2本に軽アイゼン。下りは足跡を避け禁断の木ノ実を味わうよ
うに無垢の新雪を蹴散らしながら急斜面を9合目まで。根雪を踏み抜くと腰ま
でつかります。いやぁ良い気分でした。いつもなら通らないクマザサの上を・
・・ 雪崩の事が頭をかすめましたが・・・
(天狗の森) 倉敷からやって来た男女4人組は寄り道になる「天狗の森」
には立ち寄らずに下山しました。全くの処女雪に足を踏み込み、登山路には関
わらす直線的に天狗の森を訪ねました。昼なお暗いシーンとしたこの森も、落
葉のために今は空が望めます。幹の片側に雪を着けた注連縄のご神木も何とな
く寂しそうです。天狗様を祀るお堂にお詣りして下山路に。
(快調です) 昔はクリスチャニアと言よりましたなー。ウェーデルンよろ
しくストックをタッタッと左右に突きながら、20代の若者気取りで下ります。
1時間10分で下りてしまいました。1週間酒浸りでゴロンゴロンしていたの
に、当日の快調は不思議でした。若返っているのかな?
(温泉浸り) 登山口から数分のところの「足(タル)温泉」に入りました。窓
を開けると心地よい冷気と一緒に櫃ケ山が目に入って来ます。ここからは山頂
に1m近い雪があるようには見えません。温泉の温もりに、新雪を蹴散らした
あの爽快が重なって、それはそれはいい気分でした。
(データ)H8.1.27(土) 快晴 穏やか 積雪 5cm〜80cm 単独
家発 12:05 登山口 12:40 270m 4合目水場 13:15 490m
5合目 13:30 600m 7合目 14:00 770m 9合目 14:20 900m
山頂 14:30-14:50 954m 天狗の森 15:00 770m 7合目 15:15
4合目水場 15:35 登山口 16:00 足温泉 16:10-16:40
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