田舎の女性 トップページに戻る
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「でえらい暑いときにイ草を刈りょうたなあ・・・」
「干したり、ドロで色をつけたり、もう本当にえらかったなあ。」
「私らあ、長男がおなかの中におったんじゃけど臨月のおなかをかかえて、動
 けるまで働かされたなあ・・・」
「私らがお嫁にきた頃はキュウリに石をくくり付けようた頃で、糸でくくりや
 すいような石ころを拾うちゃキュウリに釣り下げようた。」
「それでも なんでこなんな所にお嫁にきたんじゃろう。」
「あの頃はお見合いして1回か2回会うたらもう後は結婚式じゃった。」
 葬式賄いの準備をしながら講組のおばあさんたちが昔話を聞かせてくれます。
女性自らが、仕事を選び、結婚相手を選び、自分の生き方をしっかり選べる今
の時代からは想像も難しい時代が、ここにもありました。
 昨日亡くなった老婆は、一世紀に近い年月を、選ぶことの難しかった女の道
を黙々と歩んで来たのです。おばあさんの最期の日に、それなりの幸せがあっ
たことを願いつつ手を合わせました。

                              (94/11/25)