Yさんと鬼の矢幹(オニノヤガラ) トップページに戻る
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 7月上旬、20名ばかりで山を散策した時のこと。尾根道を1列で歩いてい
たみんなが集まって、背丈80cmばかりの茶色い3本の植物をのぞき込んでい
ます。一行の最後尾にいたYさんの到着を待って、「Yさん これなに?」
「おおっ!! これは オ・オ・オニノヤガラ !!」
 かんぱつ入れずのYさんの声はうわずっています。
「これは オニノヤガラ。・・オニノヤガラです。実物を見るのは初めてです。
何時かは必ず見たいと憧れていました。もう、20年も待っていたんです・・。
オニノヤガラ・・オニノヤガラです。これはオニノヤガラです!」
息づかいもはやまっています。ふるえる手で花びらを一つ剥いて、
「これ! 春蘭のようでしょう。これには葉がありません。腐生蘭です。」
 数日後(オニノヤガラは来年もあそこに生えるのか?)とYさんに尋ねると
「いやいや、どこに生えるか分かりませんよ・・・。 <しばしの間>
いやあ、オニノヤガラに会えて・・・まだドキドキしているんです。」
との答でした。なんとまあ、心豊かに生きておられること。

                              (94/10/02)